オーダースーツを作る際に一番の工程となる「生地選び」。
ここで大きな問題となるのが、スーツの形ではなく、生地見本で生地を選ぶということ。特にストライプや格子柄、艶や光沢のある生地はイメージと仕上がりに誤差がでてしまいます。
せっかくオーダーメイドをするのだからと高価な生地や素材にしようするのは、とてもリスキーなことです。「仮縫い」工程のないイージーオーダーやパターンオーダーでは、特にリスクが高まります。初めてのオーダーメイドでは、何かしらの不満が出てしまうのが常です。
これには個人差がありますが、暑がりで発汗の良い方が吸湿性のないポリエステルを裏地にしてしまうと蒸れてしまう。特に冬場等は寒いからと、この仕様で作成し、実際は室内の仕事が多く感覚以上の汗をかいてしまう。
※イージーオーダーやパターンオーダーの場合、通常はポリエステル裏地が標準です。
高級な細番手生地は見た目がキレイで着心地も非常に軽いのですが、欠点として耐久性が非常に低いものです。特に最近流行の薄い生地の使用には注意が必要です。
※ビジネスシーンでの目安はSUPER 120’Sよりも薄いかどうか。デスクワークが多い方はパンツの劣化に注意。この様にシーンに合わせた生地厚選択をしましょう。
オーダーメイドということでこだわりすぎて、ステッチを一部目立つ色にしたり自己主張の強いディテールにしてしまうと、流行の時期が過ぎてしまった後に「長く着れるスーツ」とこだわりを混合してしまったことに後悔をします。
オーダーメイドスーツの採寸の際に着用しているスーツはとても重要になります。特に袖丈は重要で、その時に着用しているシャツに合わせたスーツが出来上がることが多々あります。
※テーラーはもちろん腕の実寸も測りますが、シャツの袖丈の好みに合わせようとする傾向が強いのです。
三つ揃いのスリーピースでオーダーメイドをする際に注意が必要となる裏地。オーダーメイドスーツの場合、ジャケットの裏地をベストの背中表面生地にそのまま使用するのが通常です。
このことからもスーツジャケットに派手な裏地を選び、気にせずオーダーを進めてしまうと、ジャケットを脱ぎベスト1枚になった時にビジネスシーンで背中だけ目立ってしまうことになります。
スーツのジャケットには表面生地と裏地の他に構築的なフォルムを保つ為の毛芯という芯材が使用されています。この毛芯とスーツの生地を繋ぐ方法として接着剤が用いられている場合(接着芯)、雨や強い湿気によりスーツ生地が剥離して生地に水ぶくれのような醜い模様が浮かび上がってしまうことがある。
生地から素材、サイズ感やディテールまで自らが選びオーダーしたスーツが仕上がり試着した段階で、縫製時のサイズミスや店舗工場間の指定ミス等を見逃してしまうケースが多くあります。もちろん後の修正でも応じてくれる店舗が殆どですが、できる限りこの受け取り時に浮かれず、間違いがないか細心の注意を払い試着することが大切です。
※ディテールに関しては分かりやすいですが、サイズに関しては採寸表と仕上がりを店舗で再確認してもらう。
フェアやキャンペーン等のお知らせで、ついつい何も考えずにスーツをオーダーしてしまい、気が付くと「こんなスーツ作ったっけ?」なんていうことが起ってしまうことがあります。悪い事ではありませんが、「スーツを作る楽しみ」よりも「良いスーツを着る楽しみ」という考えを持って、長く良いスーツを着続けるのも醍醐味のひとつです。